ロマンチックモード

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有頂天家族/森見登美彦

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

9/4、台風21号が温帯低気圧にならずそのまま北海道にやってきた夜、ついに読み終えてしまった。下鴨神社糺の森には阿呆の血を引く有頂天家族が住んでいる。この台風も、赤玉先生の風神雷神の扇のせいに違いない。

相変わらず半分を行く手前まで「一体これは何の話なのか…」と訝しみながら読み進めていったところ、少しずつ明かされる父・総一郎の最期の真相に釘付けになり、脳内の映像もようやく追いついたころに金閣銀閣から無情な話を突き付けられて毛玉、もとい本に顔を埋めた。登場人物たちの勝手気ままな行動と主に主人公の詭弁・機転には相変わらずの森見節が色濃くにじみ出ているものの、なんだろう、文字の間から匂いたつ、郷愁というべきなのか、悲哀なのか、とにかくぽっかり空いているのである。面白く生きるほかない、と言いつつ、始終つきまとうその喪失感は最後の章で一気にその胸の穴ぼこを埋めていく。母のもと、4兄弟そろえば有頂天なのだ!

それにしても、最後の章はすごかった。脳内で爆走する偽叡山電車が茶釜で浮くところはもう脳の処理能力を超えてた。パーン!なった。あと、実のところ弁天が苦手なのだけど、涙に免じて2作目を読むこととします。ただ、ハードカバーなので家で読むしかないのが辛いところ。