ロマンチックモード

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有頂天家族 二代目の帰朝/森見登美彦

あらすじ:
京都を舞台に描かれる狸と天狗と人間の色んな愛の物語。

9月20日、夫の資格試験勉強の邪魔にならない過ごし方としてこんなにうってつけのものはないだろうと鈍器のようなハードカバーの本を毎晩読みふけっていたら、彼が勉強している時間よりも私が本を読んでいる時間の方が明らかに長いことが露呈して「君ははたして何をやっているのだ」という正論パンチが繰り出された2週間に終止符が打たれた。ついに、ついに読み終えてしまった。

赤玉先生の正式な弟子である二代目は英国帰りなこともあって、その口調が完全に高尾ノエルで再生されてしまいました。ちょっとタイミングが…ある意味ドンピシャ過ぎました。今回も起こるべくして起こったことと阿呆の血のしからしむるところによって起こさなくてもよかったのに起きてしまったことがないまぜになって、まあとにかくどったんばったん大騒ぎではあったものの、他の作品とは比べ物にならないなんともセンチメンタルな幕引きでありました。

「どったんばったん大騒ぎ」の中でも天満屋と夷川早雲の退場劇は文字から絵が吹き上がるような熱量で大いに楽しみましたが、やはりこの『有頂天家族』シリーズにはセンチメンタルな空気が漂い続けるんですね。1作目では常に父の死がその風を吹かせていましたが、今回は師弟や男女のセンチメンタリズムでした。

詭弁に次ぐ詭弁が森見作品の癖になるところですが、そういった人の描く色恋というのは、ハッキリ申し上げて萌えの宝庫としか言いようがありません。矢一郎と玉蘭の詰みそうで詰まない恋は見ていて微笑ましいし、矢三郎と海星の関係はそれはもう、それはもう!ごちそうさまです!としか言えないですよね。あれだけの化け力を持った矢三郎が!なんという!そして、弁天と二代目、そして赤玉先生の関係も、この「二代目の帰朝」のセンチメンタルに拍車をかけております。

それにしても、矢三郎の切ない独白で終わって早2年。森見先生…また7年半掛かりますかね…本当にお待ちしております。よろしくお願いいたします!!