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ルパンレンジャーVSパトレンジャー #34「伝説の銃」

あらすじ:
大怪盗アルセーヌ・ルパンが隠した銃、ルパンマグナム。仕掛けられた罠に次々と倒れていく中、夜野魁利だけが幻影を撃ち抜きルパンマグナムを手に入れる。

ルパンレンジャーたちが取り戻したいと強く願うほど「大切な人」を撃ち抜かなければ手に入らないルパンマグナム。怪盗としての決意を量られるというえげつない罠でした。

まず、ノエルが倒れた、という報を受けるところから始まったことで、敵の強さとノエルというひとりの人間の体温が感じられました。
「お前でも撃てないんだな」「そりゃ僕にだって弱いところはあるよ」
そんな会話が成り立つほど、彼らはひとつの目的で集まったチームであることもまた色濃く出た回だったと思います。

まず、初美花が撃てなかったことについて。つい最近19歳になった女の子が、たとえ幻だと分かっていても、取り戻したいと願う人に銃口を向けられるわけがない。これまで実際に敵を倒してきた銃ならなおさらです。怪盗になったといえ、人、しかも大切な人の姿をした人間は、撃てない。
透真の場合、取り戻したい人=弱点になっている、ということがまざまざと見せつけられました。手の震えと苦悶の表情から、透真の葛藤、悔しさ、悲しみが溢れ出ていて、見ていて痛々しかった。信じられるか…2か月前レオタードだったんだぜ…

そして、魁利です。この2人が撃てなかった理由、圭一郎から言われた言葉、取り戻したい兄の姿。魁利本人にも、兄という存在が分からなかったのではないか。育ててくれた恩と、兄みたいになれない劣等感。目指すべき指標であり、いてほしい存在であり、コンプレックスでもあった兄。


圭一郎から言われた「たとえどんな理由であろうと、怪盗という手段を選んだ時点でお前は間違っている」。

幻の兄から言われた「お前には光の道を歩いてほしいんだ」。


見れば見るほど、これは夜野魁利が自分自身を手に入れる物語なのではないかと思わずにはいられませんでした。2人の言葉を反芻する魁利。打ったシュートは入らない。魁利にとって取り戻したい人である兄とは、大切な人である前に、乗り越えるべき壁だったのではないか。今回その壁を打ち破り、ついに取り戻したい人=大切な人、他の2人を同じようになったのではないかと思います。
圭一郎や兄からすれば、それは「正し」くないかもしれないけれど、確実に自分にあった道だと自覚した魁利は強く進んでいくことでしょう。それは闇落ちでもなんでもない、ひとりの人間が個性を手に入れ未来を切り開いていく、大切な人を取り戻すことにまい進する未来への明るい一歩だったと、そういう風に私は思った次第です。「めちゃくちゃ怪盗向いてるわ」自嘲気味に言ったけれど、その自覚は実はすごく大事なことなのです。

ノエルの取り戻したいものとは?コグレさん?ていうかマジで魁利くん早くつかさ先輩に会ってくれないかな~というところで次回、「温水さん、高岩化する」お楽しみに!

それにしても夜野魁利…いや確かにただの闇落ちかもしれないけれどね!(実際Twitterや演じる本人はそういう感じです)でも、圭一郎と兄の言葉を反芻してから怪盗に向いていることを自覚する流れは、その一言で片付けちゃいけない順序だと思いたいんです。逆に、ただの闇落ちでこの順序だとしたら、ちょっと…いえ、なんでもないです!