ロマンチックモード

日常と映画と本と音楽について

第9話 運ぶ

2月5日、完全に罠にはまった。私は今、過去の経験からビジネス書の類は図書館を利用することにしている。私は無知である。それゆえ信頼のおけるフォロワーからシェアされた記事を読んだのち、紹介された本を借りることにしている。

札幌の中心部に通っている身として、大通カウンターというのは非常にありがたい存在である。図書館というのは往々にして交通の便が悪いところにあるので縁のないものだと思っていたが、生粋のインターネッ子であるところの私は検索を欠かさなかった。札幌市ではちゃんとした図書貸出システムが稼働しており、一度図書カードを作ってしまえばインターネット上で市内全ての図書館の蔵書から借りることができ、受取場所も選ぶことができる。その受取場所のひとつが件の大通カウンターだ。

大通カウンターというのは文字通り大通駅にある。札幌の市営地下鉄は3路線あり、大通駅というのはその3路線すべてが乗り入れる札幌の中心のような駅だ。なぜ大通駅なのかというと、観光地「大通公園」の駅だからである。札幌中心部の地下は、特にこの時期は地上よりも人が溢れ、ここ数年でとてもキレイで広くなったこともあり札幌市民としては非常にご満悦である。

南北線大通駅の改札を北側に出たすぐのところに大通カウンターがある。インターネットでの貸し出しをするにはまずは図書カードを作らなくてはならないため、ものは試しにと小学生の頃地元で作った図書カードを持参してみたがやはり使えなかった。ここで注目してほしいのは「小学生の頃作った図書カードをまだ持っていた」という点である。物持ちの良さを褒められてしかるべきである。この図書カードは大通カウンターでも作成できる。身分証明書で札幌市民であるということが分かればすぐに発行してくれる。その場でカードを手渡され、「すぐ横の検索機で今予約することも可能ですよ」と親切に教えてくれた。見た目は本屋さんにある検索機と同じような感じで、図書カードを入れてパスワードを入力するとその機械で予約することができるらしい。そう、この大通カウンターというのは受け渡し場所でしかない。ここに本棚があってそこから選ぶのではなく、あくまで予約した本を受取り、返却する場所でしかないのだ。

図書館で本を選ぶのも非常に楽しいことだが、それができない私のような人は気になった本を予約するしかない。沢山の本から一冊を見つける喜びは書店で味わうことにして、図書館ではコレというものを借りる使い分けも有りだと思う。インターネットで蔵書検索をして予約ができたらあとはメールを待つのみだ。ちなみに「貸出不可」もある。いわゆる禁帯出である。残念ながらビジネス書は禁帯出が多いジャンルであるらしい。冊数が少ないのか理由は定かではない。また人気の本は結構待つ。予約をすると「貸出順」というのが出てくるのだが、恐らく「何番目の予約者か」ということだろう。ちなみに11月に予約した『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』は184人待ちである。もちろんまだ手元に来ていない。ベストセラーとはどんなものかという好奇心が予約ボタンを押させたゆえの待機。大通カウンターで借りる時も貸出期間は2週間である。184人が2週間きっちり借りたとすると7年掛かる計算だけど本当にあってるんだろうか。今では本への好奇心よりも本当に手元に来るのか検証してみたい気持ちが抑えられず予約を取り消すこともできない。
ちなみに小野不由美の『魔性の子』は2~3人待ちで借りることができた。シリーズ物はその順で借りれるよう順序付もできるので図書館で完走するのも悪くないと思う。というか多くは待ちがなかったり、新刊じゃない限りいてもこの程度だろう。

そんな感じで気になる本が見つかると蔵書検索をし、予約ボタンを押して気長に待つ、そんな日々を送っていたわけだが、ひとつだけ問題がある。文庫かハードかの見極めが難しいのだ。もちろんページ数やタイトルで別に検索すれば図書館以外のサイトで確認することは可能かもしれないが、いざ予約しようとなるとその確認が抜け落ちてしまう。大通カウンターに取りに行くと本を裸で手渡されるわけで、鞄に空きがないと本を手にもって歩かなければならない。

この日、2週間ほど前に予約した本が受取可能となったため、いつものように少し鞄を軽くして意気揚々と向かったわけだがまさか厚みが3センチを超えてくると思わないじゃないですか。パンパンに膨らむ鞄、軋む持ち手の付け根、肩に感じるG。ちなみにお借りしたのは『日本の未来を考えよう/出口 治明著』です。入口出口田口~~~ッ。以上、第9話、運ぶ、完。


日本の未来を考えよう

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