ロマンチックモード

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秋、生鮭の醤油漬け

9/3、前の日の夜に近所で一番安いスーパーで買った生鮭を朝から醤油に漬け込んだ。醤油と酒を適当にドバドバと入れただけの焦げ茶色の液体に生鮭を入れただけなんだけど、冷蔵庫に入ったそれを見て夫は「これは絶対にうまいヤツだ」と思ったらしい。夜焼いて出したら喜んで食べていた。

私の中で生鮭と言えばこの調理法で、逆に言うとこれ以外の方法が思いつかない。今年3月に亡くなったおばあちゃんから教えてもらった唯一無二の調理法。おばあちゃんがまだカートを押して歩くことができた頃に、なにがどうなってそうなったのかはさすがに覚えてないけれど、おばあちゃんと二人で百貨店の地下食品街で買い物をしたことがある。百貨店の地下食品街!スーパーの3倍の値段でお手本のような魚がザルに入れられているのをおばあちゃんはお店のおじさんと話しながらひょいひょい買ってしまうわけです。そのうちの一皿を買ってもらったのが生鮭だった。

それまで安いスーパーで塩鮭しか買ったことのなかった私は衝撃だった。美しい!これが!生鮭!いえいえ、生まれも育ちも北海道ですから、小さいころには時期になれば立派な鮭を一本買い、おじいちゃんが捌いた鮭の腹から出たいくらはおばあちゃんが醤油漬けにし、鮭はあっという間にちゃんちゃん焼きになった。見たことないわけじゃなかったけど、おじいちゃんが亡くなり、昔ほどそういう催しからも遠ざかり、自分の家計にあったスーパーとお付き合いし始めた私にとって、久しぶりに見る百貨店の生鮭はそれはもう輝いて見えたのであります。

紙に包まれた生鮭を受け取りながらおばあちゃんは醤油漬けにして食べたらいいと教えてくれた。それ以降、生鮭が出回るとせっせと買っては醤油漬けにしてきた。前の日の夜、珍しく夫の車で買い物に出かけたら、私が一度スルーした生鮭を物欲しそうに見る夫がいて、ならばと思って漬けた甲斐があった。あまりにも自然と醤油漬けにしてしまったので、はて、なんでだっけど思い返せば、それはおばあちゃんの味だった。こんな風にして残っていくものの方が多いのかもしれない、と思った。