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カルテット/べっぴんさん

  • カルテット

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あらすじ:偶然出会った4人がすったもんだします
終わってしまいましたね…『逃げ恥』から引き続き素晴らしい火曜の夜を過ごさせていただきました。
最初、もたいまさこから始まるサスペンスかと思いきや、いやー、面白かったです。終盤なんて、最初マキさんが殺したとか殺してないとか旦那がどうとか言ってたのも全部忘れてただひたすら「この4人に良き未来を…!」と祈っていました。結果、一番厳しくも、一番幸せな形を選んでくれたように思えます。
印象操作と外野からの野次でここまで事実は歪むものなのか、と言うのを突きつけられ続けたこの3ヶ月、フロント4人はいわずもがな、脇を固めるノクターンのご夫婦、アリスちゃん、みんなみーんな素晴らしかったですが、なんと言っても松たか子!表情の演技が凄かったですね。最後、聞いた事もない名前で呼ばれるマキさんは、それまで見たことのないマキさんで、松たか子、ある意味3役でしたね。こんな演技が舞台や映画じゃなくテレビで、それも3ヶ月間毎週見れたなんて、とっても贅沢な時間でした。
白黒つけないと気がすまない魔王から見事逃げ切ったパーティ・ドーナツホール、大事なところはグレーにしたまま旅は続く。私は好きです。グレー。思い出されるのは「死と乙女」について問い質されたマキさんの一番怖い表情。やったんじゃない?いややってないかもよ?うーん、私は、クロに一票。なーんちゃって。こうして外野の声は作られていくんでしょうね。

  • べっぴんさん

あらすじ:富豪の娘が商売を始めて成功します
こちらも先週終わってしまいました。正直すごく面白かったかと言われると、微妙!これに尽きます。ただ、なんといいますか、嫌いになれない…いや、どちらかというと好きかもしれない。「好きかもしれない」のまま終わってしまった、そんな朝ドラでした。
なぜこの二つのドラマの感想を並べたかというと、この『べっぴんさん』も白黒つけないタイプのドラマだと思っていて、これは私がこれまで見た朝ドラの中にはそうないものでした。
私が観測していたSNSの感想ではとにかく主人公すみれの鈍感さ、人の心の分からなさが取り沙汰されて、人によっては相当の嫌悪を抱かれていてあらあらまあまあと思っていたのですが、私にはこのドラマの登場人物は全員鈍感だったと感じられたのであります。
「フレンズによって得意なことが違うからね!」という言葉のとおり、世の中には言語化することが苦手なタイプの人がいて、このドラマには両方の人たちが混在する、ある意味リアルな人間関係を観察できた半年間でした。
主人公のすみれが一番言語化することが苦手なタイプだったので槍玉に上がってしまいましたが、キアリスの4人はレベルこそ違えど苦手同士のグループだったんじゃないかと思います。君枝ちゃんはどんな場面でも自分の感情を最優先にする分、その態度で周りを傷付けた。麻美さんは我慢強いけど相手にも正論で殴ってきた。良子ちゃんは言葉を選ばず他人を傷付けた。すみれは人の心に鈍感で、自分の気持ちにも鈍感だった。
栄輔も素直に言語化しなかったからああなったとも言える(すみれが叩かれたのはこのあたりだと思われるけど実のところ「好き」など言葉にして伝えてない)し、我が愛しの紀夫に至ってはキングオブ不器用。キングオブ空気。キングオブそこじゃない。
でもね、いいと思うんです。日常生活の中で、全てを言葉にして、白か黒か、それってそんなに大事なんだろうか。すごく仲良しだけど、たまにはケンカする。明らかにこちらが悪ければ自然と「ごめんなさい」という言葉が出るけれど、すんなり出ない。なんとなくお互い様のような気がする。むこうも謝ってこない。でも別に嫌いになったわけじゃない。そんな時、次の日には案外ケロッと普通に会話できたり、かしこまっては無理だけど「なんかこないだはごめんね」つって「いやいやこっちもなんかごめんね」つって、軽く終わったりする。日常なんて、そんなことの連続で。
少しずつ老いていく登場人物たち、なんとなくずっとそこに居続ける人たち、老いた人たちの周りに増えていく若い人たち、決して強くはない個性を持つ彼らは間違いなくひとりひとりの人間で、ああいう時代のそういう人たちがいたという記憶を見させてもらったような、そんな半年間でした。
このドラマが「好きかもしれない」私が確実に「好き」と言える場面は、主人公の娘、学生時分のさくらが立てこもったバーに乗り込んだ時の紀夫「お父さんもいるぞ」、同じくさくらが家出から帰り、先にお風呂に入ろうとした時の紀夫「お風呂はお父さんが先だろ」、そして最終回の紀夫です。つまり、紀夫です。なんだかなあと思いつつ、たまにツンと面白い半年間でした。多分、好き?うーん、グレーで!