ロマンチックモード

日常と映画と本と音楽について

PK/伊坂幸太郎

久しぶりに本でも読もうかと思って、でも手元にある読みかけに手を出す気にはなれず。本屋で馴染みの作家の本を手に取った次第です。今このブログを読み返したら、ほぼ10年ぶりの読書欲の波が来ている。10年!

PK (講談社文庫)

PK (講談社文庫)

「PK」「超人」「密使」の短編3つからなる中編小説。キーワードは臆病と勇気、そしてヒーロー。この本を選んだのは、久々の読書というのもあって「読んだことのある作家」で「薄い」この2点でひょいと買ってきたんですけど、めちゃくちゃ「今の私」にぴったりな本でした…恐ろしい、これが出会いというものなのだなと、感動しております。
いわゆるSFなのですが、伊坂幸太郎にしては風呂敷の畳方が甘いというか、SF的にも現実的にも答えを書かないまま終わっている。そういえば初期のころは勧善懲悪が読んでいて気持ちがよかったけど、だんだんとこういう着地点になっていったんだったな、と読み終えてから思い出しました。でもやっぱりこの人の書く文章というのは読んでいて気持ちがいいし、全く関係のないように見えた登場人物たちが、時間も場所も状況も全く違う中で一番深いところで繋がっているようなこの感覚が、早く答えを知りたいけれど、この本をずっと読んでいたいと思うこの気持ちが、めちゃくちゃ気持ちよかったです。読書を再開するのにぴったりのチョイスだったかもしれない。
最後の「密使」で運命がほんの少しずれていくんだけど、その「ずれ」を起こすために選ばれた「時間スリ」の手口と、彼が選んだ職業と、彼自身の良さが最高に今の私にベストマッチしていて、ちゃんと調べられて書かれているのが分かるこの感覚はこの作品が発表された2012年にはまだ私の中に育っていなかったと思うので、今読めて本当に良かったです。
じゃあこの本がおすすめかと言われると、うーん!微妙!以上です。
ところで私「魔王」読んでたんだね…内容が全く思い出せないんだけどめちゃくちゃ怖がってる。読んだってことは家にあるのかな…分からん…