ロマンチックモード

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映画「ペンギン・ハイウェイ」


とにかくやべえもんを観てしまった…

まず、画面から溢れる夏・夏・夏!それも、暑くて冷たい、小学生の頃の夏休みそのものが画面から幾度となく繰り出されるので、もっと暑い時期に見たかった、というのが正直な感想です。だってなんかもう、寒いし、札幌。

何かが起こっているはずなんだけど、どこに向かっていくのか分からないうちにいつの間にか画面を右往左往する小さな研究者たちのことが大好きになっていて、気付けばものすごく遠いところまで連れていかれてしまっていた。

アオヤマ少年のなんと健やかなことか。彼ほど自分の成長に敏感であるにはどう過ごせばいいのか、その謎を解くべく我々はアマゾンの奥地ではなく映画館へ行くべきでした。彼はすごい。もちろん創作上の人物ではあるんだけど、少なくとも私は少年のその思考プロセスに感銘を受けた。なるほど、詭弁だなんだとのたまう森見登美彦がその思考・語彙力を少年に落とし込むとこんなに純度の高い子供が出来上がってしまうのか…お、恐ろしい!
とにかくこの物語の主人公であるところの少年は大変将来有望であることには間違いないのだけど、彼のおっぱいへの執念と森見作品の主人公であるという2点(というかほぼ後者の1点)が「腐れ大学生」たる未来を予感させている。

中盤、秘密の場所で夏休みの研究に勤しむ彼らや、少年とその周りの友情と恋とおっぱい。あまりにファンタジーすぎて、考察などせずに胸の内にとどめておきたい夏の思い出。そんな映画でした。巷に溢れる評ほど単純な物語ではないことだけ書き残しておく。3.8。

内容ばかりに目が行きがちですが、音楽が素晴らしいと思うのですよ。久しぶりにオーボエのきれいな音が映画館に鳴り響いて、目が覚めた気分です。

9/4追記:
日が経つにつれ、この映画の評がジワジワと上がってきています。正直に書くと本当に難解で、見終えてしばらくあまりのことに脳がショートしていました。ただ、少しずつ思い出されるこの映画の光景は筆舌しがたく、この感覚こそ森見登美彦の作品である証拠であるし、そうなればこの映画の完成度は素晴らしいものだったと言わざるを得ない。森見登美彦の小説は2度目からが面白い。この映画ももう一度見れば最初の最初から楽しめるに違いない。この映画を3.8にしたせいで自分の中の採点がとんだ辛口になってしまっている。

あらためて、この映画を4.0としたい。そしてできれば、もう一度見たいなあ。