ロマンチックモード

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恋文の技術

京都のとある大学の研究室から1人遠くの研究所へ追いやられたので、むしゃくしゃして文通してやった。今は始めて良かったと思っている。まる。
文通武者修行と銘打って研究所の後輩・同輩・先輩、家庭教師をしていた時の教え子、知り合いの小説家、妹へ手紙を書いて書いて書きまくる。いつかは恋文の代筆をするベンチャー企業を興し世の悩める恋文落ち武者を救うべく今は武者修行の身。そしてその中で掴んだ恋文の技術。
一、大言壮語しないこと。
一、卑屈にならぬこと。
一、阿呆を暴露しないこと。
一、おっぱいにこだわらないこと。
…そして。
まず、この人はどうしてこう詭弁が好きなのか。この本にはいわゆる恋文というものは結局1通も載っていない。守田一郎が上記のような関係各位へバンバン手紙を書く。その内容が記されているだけ。ただし、返信は載っていない。それぞれの相手に対する守田一郎の手紙のみが載っている、という状態で日付がどんどん進んでいく。
後輩から恋の相談をされたり、知り合いの小説家の愚痴を聞かされしかも向こう側から返信を待たずに次の手紙が届くことに苦言を呈したり、先輩とはくだらない争いを勃発させたり、京都へいったん帰省した時にはあまりにも情けない事件を起こし妹からは「おにいちゃんには絶望しました」と言われる始末。
この人の書く手紙は全体的に詭弁でできているし、妙な言い回しがツボにはまって面白くもなっているのでグングン進むのですが、肝心の恋文を書けていない。だんだん「この人頭おかしいんじゃないか」というか「むしろここまで書けるのが凄いんじゃないのか」と思ってしまうんだけど、最後に書かれた恋文を書くための教訓。上記に抜粋した教訓の最後に付けられた一つが、切ない。おかしくも切なくて、少しキュンとします。
夜は短し歩けよ乙女』を読んでおくとさらに面白い一冊。

恋文の技術

恋文の技術

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)