ロマンチックモード

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いやでも本当良かったですよね「そのときは彼によろしく」

I LOVE YOU (祥伝社文庫)

I LOVE YOU (祥伝社文庫)

一冊を読む体力も尽きていた時期に、でも休憩時間になんか欲しいと思って買ったオムニバス。伊坂幸太郎はもう胸を張って大好きな作家だと言えるし、石田衣良ブロードキャスターを見てるとたまに出てきては話題に沿ってるのか非常に微妙すぎるコメントをちょっと高めの声で「なんですよねぇ〜」みたいな感じで話しているのを半笑いで眺めていたと言えるし、市川拓司は「そのときは彼によろしく」で号泣させられたしで、全く知らない作家で博打に出るよりいいだろうと思って買ったんですけど、こういうのもっと読みたいと思いました。というのも一番良かったのが読んだことのない作家の一編だったからです。
伊坂さんは軽く人を行方不明にしちゃったりしてやりたい放題だし、石田さんは前にこちらでも書いたとおり読み辛かったです。市川さんはまぁ…ベタっちゃベタかな…みたいな感じだったんですけどすごく良かったのは中村航さん。もうさん付けです。中村航さん。
いわゆる今時の、一文が短めなタイプの作家なのですけど、独特のリズムでそれを感じさせない。この一編には色んな状況の男子が出てくるんですけどみんな基本的にダラダラしてるのにちゃんと個性が出ていて面白いです。「中野商店」はほとんどがそのセリフで個性を出しているのに対して、こちらは登場人物がとる行動をシンプルにありのままを伝えるだけで個性を出している。これもまたすごい。
「お、なんだ、やるのか?ダメだろ?やるのか?」ってなったところで、かなりの確立で小説の中の人というのは「やってしまう」行動パターンを持っているような気がするんですけど、ここに出てくる登場人物は「いや、やっぱまずいッスよ」てなる。そりゃそうだろうとこちらも胸をなでおろす。そういう逸脱のし過ぎなさがあって今の私には非常に丁度良いのです。
100回泣くこと

100回泣くこと

それで今、これを読んでます。いい感じです。

「結婚しようって言われたら、普通断れないよね」
僕の手元を照らしながら彼女は言った。
「そんなことないでしょ」
「いいや、無理。普通断れないよ」
彼女は何かの意味を強調したいとき、普通という言葉をよく使った。
「あー、でもね」と、彼女は言った。「夜景の見えるレストランで、もの凄く凝った方法で指輪渡されたりしたら、断れるかも」

こういう恋愛小説なら読めます。でもやっぱり「NANA」はどうかと思います。よくあんな狭い世界でズッコンバッコンできるなぁと、ある意味感心しています。