ロマンチックモード

日常と映画と本と音楽について

ジャージの二人

色々あるけど、とりあえずジャージに着替えて涼もうか。
世間体とか、優しさと厳しさとか、他人には言えないし言う必要もない誰にでもあるわだかまりを、虫いっぱいの避暑地でジャージでも着てとりあえず落ち着こう。とりあえず落ち着いて、したいことをやって、たまに真面目にやってみて、できたらできたでいいじゃない。
主人公の二人はどう大目に見ても世間的にうまくいっているとは言えないけど、避暑地に来てから傍目から見ると分からないけど静かに確かに変わっている様子が分かります。滞在する日数は短いけれど、ここに来ることで確実に「考えること」ということを改めてしているように見える。たとえば振り返ったり、確信を得たり、考えなおしたり。そういう時間というのは絶対に必要で、もちろん普段からそういう風にできるのが一番なんだけど、なかなか難しい。
というかこの空気感が絶妙。増え続けるトマトとか、無言とか。この親子は…とニヤニヤしながら頭を抱えてしまうやり取りがてんこもりです。あといちいち人が増えたり減ったりするたびに言い直さない。笑っちゃうのでやめてください。
サイドカーに犬」と同じような不思議感だなーと思ったら原作者が同じでした。この人やっぱりすごい。こういうのを男性が書く、というのがすごいと思います。それから中村監督やっぱり好きです。「アヒルと鴨のコインロッカー」も非常に良かったですが、回想の入れ方がすごくいい。この「ジャージの二人」もなかなか複雑な人間関係ですが、初見で、しかもそういった説明の台詞も一切ないのにちゃんと分かる。何も起こらないけどそれぞれになかなかの波が訪れている。それを空気だけで映しきる。面白かったです。

ジャージの二人 [DVD]

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