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映画「エクスペンダブルズ」と「ジョン・ウィック」

7月19日、自分の誕生日パーティーの準備を自分ですることについて、虚しさを覚える。ただひとつだけいいこともあった。すべての準備を行うことにより、映画のチョイスにも有無を言わせないことができるのだ。というわけで、各俳優のキルカウントが爆発的に上がることに定評のある「エクスペンダブルズ」シリーズの記念すべき第一作をチョイスした。

アーノルド・シュワルツェネッガーカメオ出演する無駄に豪華な本作は、緊張感のなさを補ってあまりある火力が魅力だ。1キルにかける情熱が桁違いすぎて最初こそ若干引くものの、最後まで貫き通されるその熱意に感服する。誕生日にぴったりのお祭り映画だ。


目を引くのはニヤニヤしているだけでなにもしないブルース・ウィリスだろう。本当にニヤニヤしているだけで何もしないのである。(ちなみにアーノルド・シュワルツェネッガーも何もしない)焼け石に水のような会話と、2010年公開とは思えないありふれたストーリー、時代を反映しない「冷蔵庫の女」の存在など、時代劇の域に達しているように感じる。たとえばパニック映画で足を引っ張るだけの女が登場するとさすがに不快感しか覚えないが、この映画に関しては一貫して「強い火力であらゆる手段で人を塵にしていく様を撮りたい」だけの映画なので問題ない。


いや、問題はあった。後半になるにつれ軽機関銃での連射が主になってくるので雑なのである。火力が強いのは結構だが序盤のクナイが良かっただけに後半の雑さがいただけない。残弾数という概念の薄さも相まって、すでにいびきをかきはじめた夫をシャワーに送り出し1人「ジョン・ウィック」を再生しだしてしまうのであった。

バイオハザードのようなホラーゲームでは銃のチョイスが非常の重要であり、軌道のブレ、装弾数がモノを言うといっても過言ではない。「エクスペンダブルズ」に代表される見栄えに特化したお祭り映画も良いが、装弾数や武器のチョイスをきっちりと描いたうえでキルカウントを稼いでいくのが昨今のトレンドだ。その火付け役が「ジョン・ウィック」だろう。


ジョン・ウィックのメイン武器はハンドガンP30L、装弾数15発、コンペンセーターを付けることにより反動を抑え威力を増しているそうだ。ジョン・ウィックは基本的に1人につき1~3発で仕留めていくので5人に1回装填しなければならない。ジョン・ウィックの1作目で好きなのは地下プールからパーティー会場までの流れるようなアクション。弾の軌道で壁の向こうにいる敵を把握、まず銃だけを前に出し壁の向こうの敵の足を撃ち、前のめりになったところで頭をホールド、一度顔を上げ正面からの敵を心臓・頭の2発で仕留めておいて、改めてホールドしておいた敵の頭を撃ち抜く。仕事とはこうありたいと思わせるアクションだ。


火力にものを言わせ全てを焼き尽くすのも大好きなのだけど、それを観ると「急所しか狙わないヤツが観たいな」と思ってしまう。甘いものを食べるとしょっぱいものが食べたくなる、あの原理を発動させてしまったので、我が家のTVの誕生日キルカウントはすごいことになってしまった。すでに酒もまわり夜も更けていたので、「今日はこれくらいにしておいてやるか…」などと言いながら再生を止め、誕生日の夜を終わりにしたのであった。