ロマンチックモード

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映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

9月16日、ようやく劇場に足を運んだ。ほんのりネタバレしています。

あらすじ:
落ち目のテレビ俳優リック・ダルトンはハリウッドに居を構えていた。隣に越してきたのは新進気鋭の監督と女優で…。

タランティーノの新作が観れる!」とワクワクしながら「シャロン・テート事件が題材らしい」「事件について知っておいた方がいい」「ヒッピー文化における1969年についても少し情報を入れておいた方が」という公開前の記事を目を皿のようにして読んでいた。見終わった今、それらの記事の過不足のない説明のお陰で120%楽しむことが出来た。


『ワンス・アポン・ア・タイム…』なので、直訳すると『昔々…』。日本でいう『昔々あるところに』と言う出だしのあれだ。『昔々あるところに、リック・ダルトンというテレビ俳優がいました。』から始まるおとぎ話が本作だ。


今出ているこの映画の紹介文には必ずと言っていいほど「ラスト13分で映画史が変わる」と書いてある。よくこういう物言いをする映画というのは、手法的な意味で「変わ」っていることをウリにするのに使うんだけど、タランティーノは違った。本当に歴史を変えた。本来的には違うけど、物理的に歴史を変えてくれた。


シャロン・テート事件というのを少し調べると、なかなか凄惨な事件で、観る前の私は楽しみでありながらもかなり構えていた。予告の「ラスト13分」というのは間違いなく事件のシーンだからだ。その事件で行われた残忍な行為はここに書くことすらしたくないほど忌むべきものであったので、それを見せられると思うとさすがに身構えてしまった。どれくらい血が飛び散るのだろう…というか、どれくらい犯人の行為をなぞるのだろうと。


結果的に言えば、全く心配することはなかった。確かに血は飛び散ったしなんなら丸焦げになったりしたけれど、思ってたのと全然違った。1969年8月9日というゴールをしっかりと印象付けながら進んでいくので、「あー!クリフ、行かないで!」なんてドキドキハラハラしてしまったけれど、いよいよのラスト13分に起こるアレコレは、終わってみれば「知ってた!!!!!!!」の連続で、全然そういう映画じゃないのに与えられた結末があまりにも私を満足させてくれるものだったので、号泣してしまった。


こんなハッピーな13分を見せられた後に振り返ってみれば、とにかくディカプリオ(リック)とブラピ(クリフ)のコンビの最高を集めた映画だった。2人の魅力がギッシリ詰まった160分(友人に「2時間弱だった気がする」とウソをついてしまった…本当にそれくらいだと思ってた)なんて、タランティーノにしか撮れない。だってディカプリオは癇癪持ちの泣き虫で、ブラピは仲間思いのケンカの大将だよ?なんだそれ!最高かよ!


どうしても血のイメージがまとわりつくタランティーノ映画の中でも、結末を知りさえすればとんでもないご褒美ムービーが2019年に爆誕してしまって、それをちゃんと映画館で観ることが出来て、私は最高に幸せな気分になった。いざという時の為に、私も火炎放射器の持ち方講習を受けたのちに、物置にでもしまっておきたいな、と思った。


グロが得意でない友人が渋っていたので「じゃあちょっと様子見てくるね」と台風の中田んぼの様子を確認する気持ちで鑑賞したのだけど、「シャロン・テート事件のことを知っていれば絶対に大丈夫だし、ディカプリオがエンドゲームのソー並みにすぐ泣く」と伝えたら、後半が響いてしまったらしくすぐさま「行く」となってくれた。見てくれればもうなんでもいい。


帰り際、感動の涙が止まらずトイレでグスグスしてたら、うっかりパンフレットを買い忘れてしまったので、あとで買いに行くつもりだ。